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村野藤吾「梅田吸気塔」のレトロフューチャーな魅力。大阪の地下街を支える迫力のモニュメント

更新日:4月16日


阪神梅田本店2階の屋外通路からの眺め

大阪の南北をつなぐ御堂筋。その起点となる阪神梅田駅前に「梅田吸気塔(梅田換気塔)」はあります。まるで現代アートのオブジェのように不思議な魅力を放つ建築を設計したのは、日本近代建築の巨匠の一人・村野藤吾(むらのとうご 1891〜1984)。梅田吸気塔の見どころや村野藤吾について、また併せて巡りたい周辺のアートスポットもお伝えします。





メタリックで有機的。「梅田吸気塔」が放つ異様な存在感

梅田吸気塔は1963年、梅田地下街(現・ホワイティうめだ)が建設された際に、換気設備として建築家の村野藤吾によって設計されました。梅田の地下を訪れたことがある方なら、地下街が複雑に展開されていることをご存じでしょう。多くの人々が行き来する込み入った地下空間において空気を入れ替える役割を担っているのが、この梅田吸気塔です。


およそ半世紀以上前から梅田駅前にあるものの、その存在に注目する人は少ないかもしれません。せっかく大阪に来たのなら、知る人ぞ知るスポットに目を向けてみませんか?


阪神梅田駅の地上出口付近からの眺め

高層ビル群の間ににょきにょきと生えるように建てられた5本の吸気塔は、高さ約15メートルと巨大です。流線型のボディはステンレス製パネルで覆われており、どこかレトロで近未来的。ひと目見たら忘れがたいインパクトを放ちます。しかし、横断歩道のない車道に囲まれた三角地に建っており、駅前にありながら気づかない人もいるでしょう。近未来的な様相を見せつつも植栽の間にひっそりと佇むその姿は、どこか現代に発見された古代遺跡のようにも見えます。


塔は楕円形で、隣り合う塔同士の一部が繋がっているなど、有機的なデザインがユニークです。夜にはステンレスパネルが街の明かりに反射し、一層ミステリアスな様相を帯びます(1枚目の写真参照)。

見る角度や時間帯によっても姿を変えるので、お気に入りのビュースポットを探してみてはいかがでしょう?




「梅田吸気塔」のビューポイント

梅田吸気塔はさまざまな場所から見ることができますが、実際に現地を訪れてみて、特にきれいに見えると感じたのは阪神梅田駅の地上出口付近です。また、JR大阪駅と歩道橋で繋がる阪神梅田本店2階の屋外通路も、遮る物がなくきれいに見えます。


さらに、阪神梅田本店の対面に建つ梅田阪急ビルのスカイロビーは、梅田吸気塔を上から眺めることができるスポット。ビューポイントのある阪神梅田駅周辺は横断歩道のない車道が多いため、移動は歩道橋や地下街を利用するのが便利です。迷わないよう目的の建物名をチェックしておくとスムーズでしょう。


梅田阪急ビル、スカイロビーからの眺め




「梅田吸気塔」の設計者・村野藤吾について

村野藤吾は1891年、佐賀県に生まれました。早稲田大学で建築を学び、その後、兵庫県宝塚市に住まいを移すと、1984にその生涯を終えるまで関西圏を中心に数々の名建築を世に発表しました。「アベノセンタービル(阿倍野センタービル)」や、「きんえいアポロビル」「シェラトン都ホテル大阪」など、大阪を中心に多くの村野建築を見ることができます。


戦後、日本の多くの建築家が合理性や機能性を重視したモダニズム建築に傾倒していく中、村野氏は古典建築の装飾性や土地の風土を取り入れた独自の哲学による建築を発表し続けました。特に村野氏の設計する階段には独自の優美さがあり、“階段の魔術師”と称される程でした。1940年代後半から約30年にわたって村野氏が40以上の建物を手がけた関西大学の千里山キャンパス(大阪府吹田市)の「関西大学会館」や「簡文館」には、美しいカーブと薄いスラブ(床)で構成されたらせん階段が現存しています。


また、代表作の一つである「世界平和記念聖堂」(広島県広島市)は戦後の建築として初めて重要文化財に指定されました。カトリックの教会らしい西洋的な荘厳さを感じさせる空間は圧巻です。西洋的でありながら、よく見ると装飾を施された欄間や、アーチを描く太鼓橋など日本的な装飾が散りばめられており、巨匠の才を感じさせます。

世界平和記念聖堂のほか、「日本生命日比谷ビル」など複数の建築で日本建築学会の作品賞を受賞しています。さらに1958年に藍綬褒章、1967 年に文化勲章を受章するなどその功績は大きく評価されています。





「梅田吸気塔」周辺のパブリックアート

大阪駅周辺にはまだまだ魅力的なパブリックアートがあります。梅田吸気塔と一緒に、世界的アーティストによる彫刻や名建築も巡ってみてはいかがでしょう?


アントニー・ゴームリー《MIND-BODY COLUMN》

Antony Gormley《MIND-BODY COLUMN》(2000)

イギリスを代表する彫刻家のアントニー・ゴームリーは、自身の体を型取りした彫刻作品で知られています。高さ15メートルを越える「MIND-BODY COLUMN」は、ゴームリー氏の体を象った鋳鋼の像を10体も積み上げた大作です。地球の核の主成分である鉄が素材に用いられ、「大地と人間の連続性」を表しています。

JR大阪駅から徒歩約5分、ホテルモントレ大阪や明治安田生命大阪梅田ビルなどに囲まれた屋外スペースで作品を鑑賞できます。





原広司「梅田スカイビル」


梅田スカイビルは複合都市「新梅田シティ」の中核施設として、1993年に竣工しました。設計した原広司(はらひろし 1936〜)は、京都駅ビルや札幌ドームなど都市の景観を担う大規模建築を数多く手がけてきた建築家です。梅田スカイビルは、高さ173メートルの2棟の高層ビルを空中庭園展望台で連結したユニークなデザインが特徴。展望台からは大阪の街並みを一望できます。

JR大阪駅から徒歩約7分、梅田吸気塔からは徒歩約18分で行くことができます。






街歩きしながら梅田のパブリックアートは満喫!

再開発の進む梅田一帯は、大阪市内でもひときわにぎやかで洗練された街です。高層ビルが建ち並び、人通りも多いエリアのため、無心で雑踏を歩きがちという人もいるかもしれません。建築やアートに着目すると、新たな梅田の魅力を発見できるはず。都会のビル群の間に静かに佇むパブリックアートと出会う瞬間は、「こんなところに世界的アーティストの作品があるなんて!」という新鮮な驚きを感じられるでしょう。



基本情報


村野藤吾「梅田吸気塔」

住所

大阪市北区曽根崎 2-16

アクセス

阪急「大阪梅田」駅から徒歩3分

留意事項

吸気塔が建つエリアは車道に囲まれており、横断歩道もないため近づくことはできません。


アントニー・ゴームリー《MIND-BODY COLUMN》

住所

大阪府大阪市北区梅田3-3/JR大阪駅西側の中央広場

アクセス

JR「大阪」駅、Osaka Metro「西梅田」駅、JR・阪神線「福島」駅から徒歩5分程度


梅田スカイビル(原広司)

住所

大阪市北区大淀中1-1-88

電話番号

06-6440-3899(新梅田シティ総合案内所) 06-6440-3855(空中庭園展望台)

アクセス

JR「大阪」駅から徒歩7分、阪急「大阪梅田」駅から徒歩9分、Osaka Metro「梅田」駅から徒歩9分

営業時間

空中庭園展望台 9:30〜22:30(最終入場22:00) ※営業時間は予告なく変更となる場合があります ※建物内のショップ、美術館等はそれぞれ営業時間が異なります。

定休日

なし。営業時間の異なる特別営業日についてはWebサイトをご確認ください。 https://www.skybldg.co.jp/observatory/information/

公式Webサイト


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