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【EXPO2025】アイルランド館で出会う、アートと自然が織りなす「響き合う風景」

  • 執筆者の写真: 隼吏 宮崎
    隼吏 宮崎
  • 7月14日
  • 読了時間: 4分

更新日:7月25日

2025年大阪・関西万博では、世界各国から集まる多様なアートに触れることができます。その中でも、今回皆さんにご紹介するのはアイルランド館に設置されたアートです。

アイルランドの豊かな文化と自然が融合した空間で、心に残るアート体験をしてみてはいかがでしょうか。

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●アイルランド館のコンセプト

アイルランド館のランドスケープは、「響き合う風景」をテーマに、人と自然、文化と信仰が静かに共鳴する空間をコンセプトにしています。


ランドスケープアーティストの辻井博行氏、Oliver Schurmann(オリバー・シュアマン)氏が手掛けたこの空間は、アイルランドの自然を想起させる風景を日本の素材で表現しています。


アカシデやヤマモミジなどの木々が織りなす森には、風にそよぐススキの穂が広がり、四季折々の表情を見せてくれます。この空間には、アイルランドのパブリックアートとして、ジョセフ・ウォルシュ氏の彫刻作品《Magnus RINN》が展示されています。





●アイルランド館のパブリックアート

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アイルランド館のランドスケープの中でひときわ存在感を放つのが、Joseph Walsh(ジョセフ・ウォルシュ)氏による高さ6メートルの彫刻作品《Magnus RINN》です。


この作品は、鋳造ブロンズから積層オークへと素材が変化し、最後に金箔が施されたユニークな構造をしています。


「RINN」という言葉は、アイルランド語と日本語の両方で「場所」、「円環」、「文化間の交流」といった概念に通じ、作品のテーマ性を象徴しています。


ウォルシュ氏の直感的なスケッチから始まり、数年にわたる研究開発を経て完成したこの作品は、日本の気候や地震の条件にも耐えうる革新的な造形を実現しました。オーク部分はアイルランドのスタジオで、ブロンズ部分はイタリアの鋳造所で制作され、最終的には2つのセクションが一体化されます。


職人による繊細な仕上げが施されることで出来上がった作品は、単に素材と職人の対話というだけでなく、私たちが人種や国境を超えて自然のサイクルと共鳴していることを表現するものです。




●アイルランドと日本のコラボレーション-辻井造園による植栽

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アイルランド館の周辺の植栽は、ランドスケープアーティストの辻井博行氏が率いる造園会社である「(株) 辻井造園」が手がけました。



百余年にわたって文化財庭園や天然記念物の保存に携わり、伝統庭園の本質を守ってきた彼らは、次世代へ向けた伝統技法の継承にも力を尽くしています。


 国内プロジェクトで高い評価を得るのみならず、海外への事業展開や講演活動を通じて、日本の風景づくりの魅力と奥深さを伝える辻井造園は、まさに“伝統と革新” を体現する集団といえるでしょう。



今回、アイルランド館の植栽を手掛けるにあたっては、アイルランドの豊かな自然を想起させる風景を、日本の素材を活かして表現しています。アイルランドと日本、両国における自然の魅力を引き出しつつも、調和のとれた空間を創出することを追求したものです。


特に注目したいのは、森の中にひっそりと佇む「ブルラン・ストーン(Bullaun Stone)」と呼ばれる石です。古代アイルランドの自然信仰に起源を持つものでありながら、表面の丸いくぼみに水を湛える姿はどこか日本の手水鉢を思わせ、異なる文化における精神性の静かな呼応を感じさせます。


このランドスケープは、Joseph Walsh氏の《Magnus RINN》、パビリオンにあしらわれた古代ケルトの象徴である「トリスケル(三つ巴)」の文様と共鳴し合い、人と自然、文化と信仰が穏やかに響き合う、奥深く心豊かな空間を提供しています。




アート、自然、そして文化が「響き合う」風景を通して、アイルランド館は訪れる人々に深い感動と気づきを与えてくれることでしょう。東ゲートからも近い場所に位置しており、立ち寄るには最適なパビリオンかもしれません。建物の外にも魅力が詰まったアイルランド館をぜひ訪れ、自然とともに豊かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。


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